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雖然知道但無法停止
by haruhico
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【物欲戦隊ルサンチマン】第21回 ルサンチマン、「巨匠」にツッコむ
2ヶ月遅れのオフレポのを書き上げた後は、1ヶ月半遅れの上映会レポート。

高松宮記念当日、午前中にヒーヒーいいながら予想原稿を書き上げて(今日もオークスの原稿書きがまだ控えてる・笑)、プリサイスマシンからの単複流し馬券を買って家を出る。

15時から開演なのに家を出たのは13時過ぎ。キャパが少ないのは分かっているので開演ギリギリでは入れないおそれもある。1時間半もかけて行って無駄足ではシャレにならないので、最悪の時に備えて毎度おなじみ「ミステリーファンのための古書店ガイド」を持っていく。トークショーの後に打ち上げがあるらしいので、その時サインを貰うために門外不出のあるモノを持っていく。

北千住駅の乗り換えで、小田急直通の「急行 唐木田行き」に目の前で発車されてヘコむ。次の「代々木上原行き」まで6分。時間が惜しい上に代々木上原での乗り換えがどうなるか分からないので時間が心配になる。代々木上原に14時2分着。すぐに快速急行の藤沢行きが来る。下北沢を出るとノンストップで次は新百合ヶ丘となり読売ランド前(準急以下が停車)を通過してしまう。2分後の「急行 小田原行き」なら手前の登戸で乗り換えればいい。だが時間がない。読売ランド前は登戸から3駅、新百合ヶ丘からは2駅。一か八か新百合ヶ丘から戻るギャンブルをする。

新百合ヶ丘に14時20分着。向こう側に「各駅停車 新宿行き」が見えたので階段をダッシュする。読売ランド前には14時25分着。登戸で乗り換えるより結果的に5分早かった

サイトに掲載されていた地図が南北逆で南口から出てしまう。改札の目の前にある地図で再度確認して行く道のアタリを付ける。上りで来たので北側に古本屋を発見していて、帰りに寄ろうと思ったら、なんのことはない行く途中である。

映画を上映する施設のあるバーだから当然街中だと思ったら、駅から離れるごとにだんだんそんな雰囲気では無くなってきた。途中のファミリーマートでペットボトルのお茶を買う。このコンビニの先を右折するとお店らしいのだが、そんなオシャレなバーがありそうな感じが全然しない(苦笑)。

キョロキョロしながら前進するとようやくそれっぽい看板を発見。

よく見るとちゃんと「新幹線大爆破」のチラシが張り出してある。

だが行列どころか人っ子一人居ない。意を決して店の中に入ると20分前なのに誰もいない。どうやら1番乗りのようだ。「『新幹線大爆破』の上映会ってココでいいんですよね?」とお店の女性に確認したらそうだという。7回目の上映だし、真っ昼間だからもうあまり来ないのかしら。「ご注文は?」と聞かれて烏龍茶を頼む。待っている間に現況を投稿しておく。多分、今日帰って記事など書けないだろうから。店の中にはスクリーンとDVDプレイヤー+プロジェクタが設置されている。まさかコレで見たりしないよね、とコワイ考えになってしまう。

烏龍茶を飲みつつボーッとしていると常連らしき人が入ってきた。マスターとの会話を聞くとはなしに聞いていると、

「フィルムひどいらしいね」
「あんなもんでしょ。でも、貸し出しの時に東映から(佐藤純彌)監督には見せないでくれって言われたよ」
「監督はいつから来るの」
「上映が終わってトークショーから」
「見たけど尺短いんじゃないの」
「貸し出し用のフィルムだけどそんなことはないだろう」

とのっけから物騒な話ばかりである(苦笑)。

名画座で昔の映画を見たりしたことがないので、使い込まれたフィルムの状態がどんなだか分からない。DVDでン十回は見ているので欠けたシーンがあれば大概分かるだろう。

そうこうしている間にいかにも常連といった雰囲気の人だけで5、6人集まった。別室の上映会場へ案内される。小さな試写会場のような部屋で、椅子は20脚ほど。スクリーン手前に「Panik im Tokio-Express」のポスターが額に入って置かれている。

字面からしてドイツ語版のようだ。スクリーンが近いので最前列はキツイとみて二列目に座る。

上映前にマスターから説明が入る。上映会の後にトークショーでその後打ち上げらしい。さっきいた場所でやるそうだが、場所の広さを心配するくらいならサッサと上映会に来ている人間優先で出欠を聞けばいいのに聞かない。

照明が落ちて見慣れた東映のロゴが映る。心配なのでストップウォッチで上映時間を計ってみる。確かに相当フィルムが汚れていて黒い影がチラチラ映る。DVDはエラいなぁと思いながら、集中して見ているとそれほど気にならなくなる。途中一カ所、明確にカットの最後が切れたのが分かったが、それでも数秒程度。あとは全く問題無かったと思うのだが、ストップウォッチは無情にも145分(DVDの表示は152分)を指し示していた(笑)。

上映が終わると、トークショーの後の段取りを付ける。後ろに撮影用のカメラを入れるので席を若干詰める。トークショーの最後にサイン会をするそうで、これで打ち上げに出る手間が省けた(爆)。さっき予約を入れてたらシビレるところだった。

しばらくして「巨匠」佐藤純彌監督登場。聞き手は石井輝男プロの下村健さん。マスターが日本映画に詳しくないために邦画の際にピンチヒッターを引き受けるそうだ。ドイツ語版のポスターも下村さんのコレクションだという。


以下、興味深いお話を箇条書きに(発言は私の記憶とメモに基づく要旨で、録音ではありません)

○元となるアイディアは坂上順(「男たちの大和」プロデューサー)さんによる。
○東映の任侠・実録路線が下り坂だったので取り組む。
○当時、駒込の六義園の裏手に鉄道専門の古書店があって、そこで売っていた新幹線の運転教則本を買って勉強した。
○国鉄は完全非協力で、後に大川博・東映社長(国鉄出身)が3年間出入禁止になる。
○総合指令所の映像資料を手に入れるために、外国人俳優をドイツの鉄道関係者に仕立てて盗み撮りしてきた(国鉄は外国には弱かったため・爆)。その成果がコレ。

○セット用に作った新幹線の内装は全てホンモノと同じ部品。そのためミニチュア2編成で2000万円(総制作費5億3000万円)かかっている。
○ただし、新幹線のセットは以後も東宝の鉄道モノで使用されて元は取った。
○撮影が遅れに遅れ、封切り2日前に完成。そのため、宣伝が全く出来なかった(DVD付録の予告編が以下のように本編と関係ない映像を使用しているのもそのためか・笑)


○高倉健の方から出演を希望してきた。
○封切り時の収支は黒字ギリギリだった。
○フランスで独自編集したモノが大ヒットしてその年の12月にフランス語版を日本で上映。
○海外で評判が良く、ノベライズ版が16カ国語に翻訳された(下は予告編の最後に出るノベライズ版の告知)。

○海外版の編集には全くタッチしていないので見る気もしない(怒)とのこと。

○監督の仕事は初号試写までで、アメリカには監督に編集権はない(「トラ!トラ!トラ!」で黒澤明監督が降板した理由の一つ)。
○TVで上映する際のカットも専門の会社が勝手に行う
○爆発は全てホンモノ(貨物5790列車も)。





ここから先は「衝撃の事実」が明かされるので、心の準備を(笑)。


○国鉄は撮影許可をくれなかったが、私鉄はOKだった。だから都営6号線の西台駅付近の東京都交通局志村検車区でのロケが可能だった。

○貨物5790列車の撮影には廃線となった夕張鉄道を使用しているが、オープニングの操車場は夕張鉄道ではなく東武鉄道



○さらに国鉄完全非協力のため、東京駅のシーンは全てセット
よく見ると、駅に必ずあるはずの壁のポスターや突き当たりの看板がないうえに、新幹線の開業から10年以上経っているのに床がきれいすぎる。

他にも「男たちの大和」撮影の秘話をいくつか話されたが、映画を未見のため詳しくは分からず。

トークショー終了後に予想外の質問タイムが設定された。

質問したいことは山ほどあるが、まず最前列の中年男性が質問する。

「この映画を10回以上見ているのですが(たったそれだけかよ!)、浜松駅のポイント切り替えの際に列車種別をなぜ『超特急』から『回送』に変更するのかどうしても分からないのですが?」

愚問である。10回で分からなかったら100回見ろ、と言いたい。佐藤監督の回答は予想通りのモノだった。

「90キロで走るには列車種別を『回送』にしなければいけないからです」

90キロで走る「超特急」なんてカッコ付かないじゃん、と鉄属性のない私にだって簡単に分かる。

30年来の疑問が氷解したのかアッサリ引き下がったので、自信満々に手を挙げると気圧されたのか下村さんが指名してくれた。

「佐藤監督に2つ質問があります。まず、先ほども出た浜松駅でのポイント通過成功後に、宇津井健が『豊橋で下り線に戻ってくれ』と言うのは上り線を逆走する新幹線という映像が撮れないためのアリバイ作り(言い訳)なのでしょうか?」
「もう一つ、撮影時には新幹線が名古屋・京都・新大阪を通過することがなく、これらの駅を通過する映像が撮れない事を演出で回避するためにこれらの3駅でトラブルを起こしたのでしょうか?」

ちなみに新大阪駅通過の演出はこう。





一つ目の質問の瞬間、後ろの方から低く「おおっ!」という声が。ベラボーめ、回数を見るってぇのはこういうのを言うんだ。

佐藤監督の回答は、

「上りが右から左、下りが左から右に走る、というのは東京人的発想ですね。名古屋で事件を起こしたのは、『ひかり』にとって名古屋が最初の停車駅ですから、新幹線が止まれないという状況を説明するための演出です」

なんかはぐらかされたような気がするのは気のせいだろうか(爆)。難詰するのが目的ではないのでサッサと引き下がる。

次に質問をしたのは50歳のいかにも映画ヲタク然とした男。何がいいたいのか全く分からないが無理矢理要約すると、身内が戦艦大和に乗っていて(以下えんえんと自慢話)、水面下部分にある水雷防御区画が非常に細かく別れているのに驚いたが、中に人がいようと浸水を防ぐために扉を閉める非人道的行為をどう思うか、といったトンチンカンな質問だった。

あまりの無神経さにイライラしたので佐藤監督がどう答えたのかは憶えていない。適当にあしらったはずだ。

時間を気にしながら下村さんが最後の質問者を指名した。

「佐藤監督の作品は中国で非常に人気があり、私も好きな『君よ憤怒の河を渉れ』が大人気だ、という話を聞きましたがなぜなんでしょう?」

佐藤監督曰く、

「中国で外国語映画の開放がはじまった時、一番最初に上映されたのがこの映画で、それまでエンターテイメント系の映画を見たことのない中国の人にとって新鮮だったということがあります。そして、この映画の主人公のように、権力によって無実の罪を着せられるといったことが文化大革命時に頻発したために一般庶民が共感出来たようです」
「中国の映画を学ぶ大学には『君よ憤怒の河を渉れ』が研究用の資料として置かれているそうです。『新幹線大爆破』もあるようです。」

キレイにけりが付いたところで質問タイムも終了し、あらかじめ段取りしてあったように観客の女性から花束が佐藤監督に手渡される。時間はもう少しで20時といったところ。

最後のサイン会でとっておきのモノを取り出す。

トークショーの中でも出てきた「新幹線大爆破」ノベライズ版(勁文社)である。今から10年ほど前に地元で発見して以来、他では一度も見たことがない。

持ってる人がいるんだねぇ、と半ば呆れながらサインをしていただく。共著になっているが、自分は全く書いていないとのこと(笑)。


佐藤監督も現物を見たことがないというから世界に一つだけの「お宝」である。

時間は20時を既に回っていて、打ち上げに参加すると帰れなくなる可能性まである。明日は仕事だし、サインを貰うという目的は達したので(参加者の大半が常連という居心地の悪さもある)、早々に退散することにした。

帰りに例の「大塚書店」を覗くとまだやっていた。中は迷路のようになっていて雰囲気だけはあるが、買いたいものはない。上映前にトイレに行ってそれきりなので駅へ急ぐ。行きに買ったペットボトルは結局手つかずだった。

Special Thanks to
しんゆり映画祭ゲストトーク2002「新幹線大爆破」
http://www.siff.jp/talk/2004talk/2002talk_shinkansen.html

この記事がBlog開設以来1800本目です。
by haruhico | 2006-05-20 22:36 | 物欲戦隊ルサンチマン
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