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雖然知道但無法停止
by haruhico
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一発でファンになりました
ぼーっと昨日の東京新聞朝刊を眺めていたら、ある感動的な記事に出会った。東京新聞を読み始めてこれほど感動的な記事を見たことがない上に残念ながらサイトに上がっていないので全文引用してみる。テルモの刺しても痛くない注射針を開発したことでも有名な岡野工業の岡野雅行さんへのインタビュー。
楽して儲ける風潮
このままで日本は平気?(記者 田畑豊)

 田畑 世界一細い「刺しても痛くない注射針」をはじめ、大企業がギブアップするような製品を、六人の従業員しかいない町工場が生産しているのは驚きです。その原動力は何ですか。
 岡野 タレントでも俳優でも歌手でも、何十年とやってきたキャリアを振り返れば、失敗失敗の連続なんだよ。失敗しなきゃ仕事はできない。失敗が成功のもとになる。それだけのこと。大会社は失敗を嫌がって挑戦しないんだよな、新しいものに。俺みたいなものができるんだから、大会社でも本当はできるんだけど、責任を取りたくないからやらないんだよ。
 田畑 岡野さんにとって、モノづくりとは。
 岡野 どっかでできることは、俺はやらない。自分にしかできないものをつくるんだという誇りがあるからね。たった六人の会社が、かっこ良くてきれいで従業員がいっぱいいる大会社と勝負するには、そこにはできないものをやってこそ、初めて世の中に認められるんだ。注射針だって、テルモさんが日本の企業百件(原文ママ)ぐらい回った。でも、できない。うちに来たら即断だよ。注射針をつくるには、パイプを伸ばすんじゃなくて、一枚の細い板金を丸めればいいと。
 田畑 モノづくりでは、常に百点満点を目指す主義?
 岡野 違うんだなあ。百二十点。ほんとだよ。百点じゃ満足しない。だから、うちの製品は(価格が)高いんだ。お客さんが安くやってくれと言ったって、そういうのはやらねえよ。当たり前の話。それが今、花開いてね。信用があって、仕事がわんわん来るわけ。
 田畑 世の社長にとってはうらやましい話ですね。
 岡野 みんな結果を先に追いすぎるんだ。これやったら、どんくらい儲かるかばっかり考えて、技術はそっちのけ。姉歯(秀次)元一級建築士と一緒だよ。手を抜いて利益を上げることしか考えないんだよな。お金というのはやった後の結果。仕事を追っかければ、自然とお金がついてくるんだ。
 田畑 ライブドア事件についても言いたいことがあるのでは。
 岡野 やってる奴もやってる奴なら、それ(株)を買う奴も買う奴。両方マヌケなんだ。いいかい、儲かることは人には言わないんだよ。これとこれを買えば、一千万円儲かりますよとあんた言うか?自分で買っちゃうよ。儲かることは親子だって言わないよ。それを他人さまに言うということ自体、間違っている。大体ねえ、パソコンだのネットだの、あんなバーチャルの世界はどうなんだい。顔が見えない奴と誰が商売やるのって。
 田畑 ネット社会の弊害の部分ですね。
 岡野 俺たちのガキのころは自分の部屋なんかないから、みんな顔の見えるところに住んでいたけど、今の子どもたちはみんな部屋持っちゃって、その中でパソコンばっかりカタカタたたきやがって。あんたも気が付いていると思うけど、大きい声でしゃべる人がいなくなっただろ。何でか分かる?でかい声出さなくても世の中済んじゃってるから。自分の世界。子どもたちはしゃべること忘れてカタカタと…。
 そうかと思えば、明けても暮れてもくだらないテレビを見て(男と女が)くっついた、離れた、殺しただのと。またそういうのを注意出来ないんだよな、親が。
 田畑 子どものしつけに自信が持てない親は少なくないようです。
 岡野 一番社会をおかしくしちゃったのは、給料を銀行振り込みにしちゃったこと。これが決定的。振り込みじゃ女房の管理で、親父はただ働いているだけ。何の値打ちもねえ。子どもはそれを見ている。だから、子どもにもばかにされ、かあちゃんの方が偉くなっちゃう。うちは現金。封筒で手渡し。給料袋をもらうのは気分がいいだろ。こっちも気分がいいもん。
 田畑 「楽して儲ける」風潮を変える政治の役割は。
 岡野 こんなことを言っちゃあ、申し訳ないんだけど、今の政治は政治屋なんだよ。 金儲け集団。てめえのことしか考えていない。何とかチルドレンだって、おかしいんだよ、そんなものは。自分の行く道を定めてみろっていうんだ。日本をこう変えるんだと。それをでかい声出してやる。そうしないと世の中通用しないよ。声の大きい奴に悪い奴はいないと昔から言われてるんだ。
 小泉(純一郎首相)さんは変わっているといわれるけど、あれが当たり前なんだ。言いたいことを言う。やりたいことをやる。俺も世間では変わっていると言われるけど、俺が普通で、世間の方が変わっているんだよ。
 田畑 小泉改革は中小企業にとって冷たいはずですが。
 岡野 それは人間の取り方であって、従来のものを壊しているんだから。いいにつけ、悪いにつけ。今までは壊しもできねえじゃねえか。今までの政治家の中で一番やりたいことをやったんじゃないの。
 田畑 それにしても、岡野さんは大きな声ですね。
 岡野 最後に一ついいこと教えてあげる。うちの社歌、何だと思う。こんなに小さくたって社歌があるんだよ。植木等のスーダラ節。かみしめて聞いてみなさいよ、歌詞を。あっ、世の中こうなっているんだなと、よーく分かるから。分かっちゃいるけど、やめられない。ここなんだよ。
【2006年2月21日付東京新聞朝刊より】
まず一番に感動的なのは、インタビュワーの想定をことごとく外しまくる岡野氏(爆)。中小企業の社長が真面目にコツコツやっているのに小泉改革は冷たい、とか、ホリエモンのような虚業家を許していては日本は滅ぶ、ってなことを言ってもらいたかったのだろうがそうは問屋が下ろさなかった(笑)。ハッキリ言って人選ミス。それに青字の部分に記者の傲慢と恣意的な誘導を見るのは私だけではあるまい。

他にも、先頃、ライブドアの被害弁護団が結成されたようだが、ホリエモンも株を買った連中も両方マヌケと断罪した著名人の発言は初めて見た。これだけでも岡野氏がホンネの人ということが分かる。

最後の「社歌がスーダラ節」というのがマジでもネタでもサイコーだ。「わかっちゃいるけど、やめられない」というのは浄土真宗の僧侶でもあった植木等の父親徹誠が「あの歌詞は親鸞の教えに通じるものがある」と喝破した代物だ。

これが同じクレージーキャッツの「無責任一代男」だったらもっとサイコーなのだが。なぜかなれば、この曲の1番の最後は「♪楽しーてもうけるスタイル!」で、これ以上の皮肉はないからだ。

俺が、つくる!
岡野 雅行 (著)
確かブックオフで105円で買って本棚のどこかにあるはずなので、見つけ次第読んでみたい。
by haruhico | 2006-02-22 01:06 | ちょっといい話
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