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雖然知道但無法停止
by haruhico
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【物欲戦隊ルサンチマン】第5回 ルサンチマン夜の池袋を走る
先週の土曜日が雪だったため、J.トレンツ・リャド原画展の期日はあと2日となってしまった。

会場がフォーシーズンズホテル本店なので、「原画展」と言っても名ばかりなのは百も承知だが、行ける時に行っていないと寝覚めが悪い。

起きたのが遅かったので家を出たのは2時過ぎ。秋葉原で野暮用を済ませて山手線で一路目白駅へ。駅の中で「沖縄物産市(?)」をやっていて「日清ラ王 沖縄そば」(250円)などを売っていた。こういう「地方限定品」に弱いのだが、さすがにこれから絵を見に行くというのに「ラ王」を買う気にはなれなかったので沖縄伊藤園の「シイクワッシャーティー」を買う。飲んでみると普通のレモンティー。180円も出して損した。

都バスの新宿駅西口行きに乗って椿山荘で降りる。勝手知ったる道をトコトコ歩いてギャラリーへ辿り着く。入ってすぐの所に見た事がないリャドの画集が置いてある。スペイン語版なので文章はチンプンカンプン。ページを繰ると他の画集に載っているものが大半。載っていないものもわざわざ18000円も出してまで欲しいと思わない。

奥の小部屋にお目当ての人物画が飾られている。「SRTA.CAROLINA VICH(200cm×90cm・1982)」は何度見ても衣装の描写法に惚れ惚れする逸品。なぜこの色の組み合わせがこういう風に人の目を欺けるのかと感心する。「MODELO(116cm×116cm・1990)」は肩の毛皮の描写法が秀逸。あと2枚未見の原画が展示されていてこれだけで来た甲斐があるというもの。

小部屋を出ると外はシルクスクリーンばかり。シルクに用はない(笑)。奥まった部屋に「Kew(73cm×73cm・1990)」がある。その隣は未見(?)の大作だが、リャドとは思えない凡作。あれだけの数の作品を残せばこういった作品もあるだろう。風景画でよかったのは「ESCALA DE VIL-LA FARNESIA(100cm×100cm・1988)」で、スペインの乾いた陽射しというのはこういうものだろうな、と感じさせる光と影の描写である。この絵を見ていると、すぐ隣で20代の兄ちゃんがツレの彼女(?)に「この絵はコレくらいの角度から目を細めて見ると…」と説明していた。むむ、オヌシやるな。

辺りを見回すと去年買った「カネットの夜明け」のポスターに18000円の値札が。あれっ、そんなに高かったっけ?

30分もかからずにギャラリーを出る。秋葉原などにあるボッタクリ屋と違い、絵を見ている最中に店員がみだりに声をかけてこないのが貧乏人には嬉しい。

椿山荘発のバスに乗って目白警察署前で降りる。途中下車の目的は「目白荘」探しだ(爆)。東京都豊島区目白2丁目まで分かっているし、現在工事中(笑)の古い木造アパートを探せばいい、とタカを括っていたのだが見つからない。日も暮れてきたし、あまりウロチョロして不審がられてもいけないので程々で切り上げる。

明治通りに出るとすぐに「古書 往来座」の看板を発見。あてどなく歩いていても古書店に出くわすあたりがルサンチマンの本領発揮(?)である。

まず外に並んでいる均一棚の量に驚く。もっとも量はあれども欲しい本は少ない。1冊100円、3冊200円なのであちこちから3冊ピックアップする。

多田幸蔵・島秀夫「英文解釈どう仕上げる」(洛陽社・1986)
渡部昇一編「知的ビジネスマンのための500語」(中央公論社・1981)
W.J.Ball「誤りやすい英語語法ルールブック」(ピアソン・エデュケーション・2000)

中に入ると雑司が谷霊園に眠る著名人・文化人の特集棚がお出迎え。漱石関連で「『我輩は猫である』殺人事件」はあっても、「贋作『坊っちゃん』殺人事件」はない(笑)。

端から順に見ていくとイキナリ高田保「ブラリひょうたん日記」(要書房・1953)を発見。奥付けを見ると定價貮百圓・地方定價貮百五圓とある。

先日、向井敏の「贅沢な読書」(講談社現代新書・1983)を読んでいて、「ブラリひょうたん」を「わが国コラム史上の金字塔ともいうべき名コラム集」と激賞し、その筆法について14ページを割いて褒め称えた挙句、山本夏彦と比べて、
『やぶから棒』は『ブラリひょうたん』にくらべれば、観察の柔軟、展開の自在において一歩を譲り、ことに機知縦横という点では敵しがたいとはいえ、その欠を補って余りあるのが、あのきりりと引きしまった文体である。(「贅沢な読書」P.113・太字はharuhicoによる)
と述べるのだから俄か夏彦ファンとしては聞き捨てならない。値段が高かったら考える所だが500円なら十分許容範囲。

目を隣に移すと同じ段に谷沢永一・向井敏「読書巷談 縦横無尽 とっておきの50冊」(日本経済新聞社・1980)もある。

池袋古書館で講談社文庫版を1050円で売っていて、「文庫本に1000円はなぁ…」とグズグズしていたのだが単行本が400円なら即買い。これまた前述の「贅沢な読書」で向井敏による対談の苦労話を読んだ後だけに丁度いいタイミングだった。

新書の棚を見ると岩波新書でサマセット・モームの「読書案内」(岩波新書青・1955)を発見。

これまた「贅沢な読書」の序章で取り上げられていた本で絶版で300円ならと購入。後で調べると文庫化されていたようでちょっと失敗。それにしても「贅沢な読書」を読んでいなければ「読書巷談」以外は多分手に取らなかったはずなので偶然とは恐ろしいものである。

文庫の棚に移ると、未読の山本夏彦エッセイ集「冷暖房ナシ」(文春文庫・1987)「生きている人と死んだ人」(文春文庫・1994)「愚図の大いそがし」(文春文庫・1996)を発見。どれも絶版らしいがそれぞれ350円、400円、200円なら文句ナシ。あと、なぜか唐沢俊一「笑う雑学」(廣済堂文庫・2004)が半値以下の270円だったので買い。「唐沢俊一のB級裏モノ探偵団」の改題本とは知らなかったが、幸い単行本の方を未読だった(笑)。

驚いたのは講談社学術文庫・講談社文芸文庫・ちくま文庫がズラリと揃っている点だ。新刊書店でもコレだけの揃いはメッタにない。しかも定価ではなく古書として値引かれている。残念ながら欲しい本はなかったが、このテの文庫を探す時にはとりあえず一度見てみたくなる量だ。

裏に回ると海外ミステリーの棚。「あっしには関わりのねぇこって」とスルーしようとしたが、一応創元推理文庫と早川文庫を軽くチェックした所、コレが大当たり。

邦訳されたバリンジャー作品の中で唯一持っていない「赤毛の男の妻」(創元推理文庫・1961)。

第4版で少々書き込みがあるが150円なら大ラッキーと思ったら復刊してるのかよ!(でも在庫僅少らしい)とぬか喜び。

そろそろ握力が落ちてきたのでお店の人に頼んで本とカバンをカウンターに預ける。

身軽になって単行本の棚を探していると見覚えのある背表紙が…

高木彬光「邪馬壹国の陰謀」(日本文華社・1978年)だよ!

喜国雅彦氏や「猟奇の鉄人」kashiba氏が絶賛の奇書(爆)。「見つかる時は、100円で見つかるこの本。皆様も是非一度手にとってご確認ください。」とkashiba氏が書かれているが、100円なんてありえねーだろと思ってたら200円でした(笑)。まだ「邪馬台国の秘密」すら持ってないのに買っちゃう俺って…。

〆て12冊で2970円(安ぅ!)。ブックオフ以外の古書店でコレだけまとめ買いした記憶はちょっとない。目筋がよくて良心的な価格の古書店である。会計の際にお店のご主人から池袋の古書店事情を伺ったところ、最近オープンしたのはココだけとのこと。

だいぶ時間を使ってしまったが、光芳書店までひたすら歩く。途中カプリチョーザの前を通り、しばらく行っていないことを思い出す。今、1人でスパゲティ1皿食べられるだろうか、と思うが時間がないので先を急ぐ。

高校時代から通い慣れた古書店の一軒だが時間がないので2階(本店)には上がらず1階(支店)だけで済ます。文庫本から見だして、奥の新書の棚でパラフィン紙に包まれた1冊が気になって手に取る。黒岩涙香の「死美人」(小山書店・1956)である(画像は中表紙)。

元々はエミール・ガボリオの創造した世界初の刑事探偵であるルコック氏をフォルチュネ・デュ・ボアゴベが拝借して書いた「ルコック氏の晩年」を黒岩涙香が「死美人」のタイトルで明治25年に翻案したものなのだが、本書は涙香作品の江戸川乱歩による現代語訳という複雑な代物。だから奥付けの検印は乱歩のものである。

涙香自体ほとんど持っていないので買い。後で調べると本来は箱入りらしい(爆)500円。

泡坂妻夫の「ゆきなだれ」(文春文庫・1988)も持っていなかったので230円なら買い。隅っこをチェックしていると谷沢永一「五輪書の読み方」(潮文庫・1986)を発見。カバー汚れ180円と書かれているがぱっと見問題なさそう。後でよく見ると折り返しの所にボールペンで謎の落書きがあるがこんな場所なら読むのには影響ない。これでカバンが買った本で一杯になる。

店を出て西口へ向う。途中で光芳書店のK1ブックスに立ち寄るが、カバンに余裕のない状態で敢えて買うほどの本はない。ガード下をくぐって池袋古書館に着く。

絶版文庫の棚をチェックすると「読書巷談 縦横無尽」は売り切れ(笑)。開高健・谷沢永一・向井敏「書斎のポ・ト・フ」(潮文庫・1984)は蔵書印入りの分際で1050円というのが気に入らずスルー。ここの絶版文庫は相応の値段がついているので私のようなケチにはなかなか手が出ない。

地下に下りると新宿の某ショップで7980円していた「××××」(大洋図書・1993)が3150円だったので速攻ゲット。ついでに長年探していた幻の「××××」(ミリオン出版・1990)も2100円だったので迷うことなく買い。2階で 「升田の将棋指南シリーズ」(大泉書店・1980)がバラで出ていたので手に取ったが1冊1000円ではスルー。

外に出ると午後8時前。この時間になれば少しは空いているだろうと西に進路を取る。

目的地は以前グルメ番組で黒部「悪代官」進がレポートしたのを見て以来、何度も通っている鰻専門店「まんまる」である。鰻専門店らしく、「頼んでから出てくるまでに時間がかかる→客の回転が悪い→行列が出来る」という悪循環に嵌りやすいのだが、さすがに土曜の午後8時台なら混雑も緩和されているかとわずかな望みを抱く。ちなみに過去7時台に行った時はいずれも30分ほど外で並んでいる。

予想以上に空いていてアッサリ席につけた。ここは養殖業者の直営店なのでベラボーに安い。目玉商品は2串分の鰻が乗った「うな丼々」である。今日も迷わず注文する。時間がかかるのは分かっているので悠然と買った本を読みだす。しばらくして「うな丼々」登場。

これで1500円ですよ、奥さん!

このド迫力。丼から鰻が溢れてます。

肝吸いもちゃんとついてくる。鰻が2匹で肝吸いに肝が1個ということは、1人前出すごとに肝が1個ずつ余る計算(笑)。

ふっくらと上品な鰻が食べても食べても無くならない。普通に食べていると…

確実にご飯が先に無くなる(これでも結構乱暴に鰻を食べている)。前々回の「牛すじカレー」とは対照的。んーなんて贅沢。二つに折りたたんでポイッと口の中に放り込む。

聞くとはなしに他人の注文を聞いていると、「うな丼々ご飯少な目」という人が結構いる。それって鰻余りまくりじゃない?と思うのだが。何でだろう。

十分満足して店を出る。懐は若干寒いがご機嫌である。問題は買った本を何処に仕舞うかだ。(おわり)
by haruhico | 2005-02-28 22:06 | 物欲戦隊ルサンチマン
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