雖然知道但無法停止
by haruhico
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
最新のコメント
上場時のコメントをヨソに..
by 通りすがり at 17:00
>青沼静馬さん こちら..
by haruhico at 16:40
ご無沙汰しておりました。..
by 青沼静馬 at 12:03
>鍵さま 明けましてお..
by haruhico at 00:06
>青沼静馬さん あけま..
by haruhico at 00:10
ご無沙汰してます。私も今..
by 青沼静馬 at 16:40
たまたま斎藤次郎さんにつ..
by きくらげ at 21:18
左翼著名人を挙げられたよ..
by あかさ at 11:36
>鍵さま お久しぶりで..
by haruhico at 23:04
>FHIROSE2さん ..
by haruhico at 21:56
遅ればせですが10年目に..
by FHIROSE2 at 11:04
>ヒロさん ありがとう..
by haruhico at 22:02
10年目に乾杯!いまから..
by ヒロさん at 10:39
>FHIROSE2さん ..
by haruhico at 21:49
VOWの路線ですね。 ..
by FHIROSE2 at 00:55
>FHIROSE2さん ..
by haruhico at 20:26
こちらの記事を拝見せずに..
by FHIROSE2 at 17:25
>FHIROSE2さん ..
by haruhico at 06:04
不覚にも閣下のこの深遠な..
by FHIROSE2 at 23:25
【追記】今週録り溜めたヤ..
by FHIROSE2 at 23:53
最新のトラックバック
0.1tを13年
from 社怪人日記2017
Foget Him Not
from 社怪人日記2016
年年歳歳カプリコ相似
from 社怪人日記2014
今年もこの日が
from 社怪人日記2013
座右の夏彦Part3
from 社怪人日記2011
昭和は遠くなりにけり
from 社怪人日記2011
たまには他力本願でやって..
from 海驢blog
♪帰ってきたぞ、帰ってき..
from 社怪人日記2011
♪な~な~な~うな、うな..
from 社怪人日記2010
環境への適応
from Anything Story
漱石の「坊ちゃん」を"読んだ"ことがありますか?
新年明けましておめでとうございます。
本年も「社怪人日記」をよろしくお願いいたします。

正月3が日はいつも時間が無くて書けない長編を中心に。

新年1本目は、昨年一番おったまげた本の話を。

と言っても12/29の話だが。

有馬記念も終わったし、行きの通勤も空いてきたし、ということで、先日ごっそり買ってきた谷沢永一先生のハードカバーなんぞを電車の中で読んでいたところ、その中のとあるコラムを読んで、往復ビンタを喰らったような衝撃を受けた。

以下はその冒頭からの引用である。
 小説に描かれたイヤな奴の代表は夏目漱石の「坊ちゃん」に出てくる教頭の「赤シャツ」。帝国大学を卒業した、当時は希少価値の文学士で、カタカナの人名をふりまわし、琥珀のパイプを絹ハンカチでみがいたり、金鎖を下げているような「ハイカラ野郎」で、妙に女のような優しい声を出す。
 初対面のとき坊ちゃんが驚いたのは、この暑いのにフランネルのシャツを着ていること、しかもそれが赤シャツだから人をバカにしている。当人の説明では、赤は体にクスリになるから、衛生のためにわざわざあつらえるんだそうだ。坊ちゃんの呆れ顔はともかく、ではこのとき問題の赤シャツは、どんな種類のシャツだったか。
 現在のカッターシャツ、いわゆるワイシャツなのか、それともスポーツシャツか、あるいは丸首か。そして上半身はシャツだけなのか、上に何かを着ているのか。赤という色の印象が強すぎるため、服装全体のイメージがつい漠然となりやすいし、どの注釈書も今までハッキリさせてこなかった。その盲点をついた小池三枝は、「漱石作品における服飾」(お茶の水大『服飾美学』七号)で、赤シャツ全身の出で立ちにおけるキザの意味を、時代背景の中において考証している。
(『「坊ちゃん」の赤シャツ』初出 大阪読売新聞1978/10/02・谷沢永一「閻魔さんの休日」 文芸春秋 収録 P.73・太字はharuhicoによる)
小学校高学年時にポプラ社の緑のハードカバーで読んで以来、100回は読んでいるであろう「坊っちゃん」である。「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」から「だから清の墓は小日向の養源寺にある」まで、諳んじるほどではないが、ここもよく憶えている。「赤シャツ」というキャラクターの造形の根拠となる大事なシーンだ。何をバカな、赤シャツは赤シャツに決まってるだろ、というのがその時の直感だ。

私一人の主観だと危なっかしいので、ここに書く前に世間の「赤シャツ」像を確認してみた。

まず、舞台となる道後温泉では赤シャツはどう思われているのか。
社長日記 - 平成16年 1月28日-29日より赤シャツのコスプレ。


松山・道後温泉の「坊っちゃん」しおりには、釣りをする赤シャツ(と野だいこ)がこのように描かれている。


1980年にフジテレビで放映された(私も見た記憶がある)アニメ「坊っちゃん」の赤シャツ(声・八奈見乗児)はこうだ。


どれもコレも大同小異で、私の認識もほとんど一緒だ。念のため、青空文庫にある漱石の原文にも当たってみよう。
 挨拶をしたうちに教頭のなにがしと云うのが居た。これは文学士だそうだ。文学士と云えば大学の卒業生だからえらい人なんだろう。妙に女のような優しい声を出す人だった。もっとも驚いたのはこの暑いのにフランネルの襯衣を着ている。いくらか薄い地には相違なくっても暑いには極ってる。文学士だけにご苦労千万な服装をしたもんだ。しかもそれが赤シャツだから人を馬鹿にしている。あとから聞いたらこの男は年が年中赤シャツを着るんだそうだ。妙な病気があった者だ。当人の説明では赤は身体に薬になるから、衛生のためにわざわざ誂らえるんだそうだが、入らざる心配だ。そんならついでに着物も袴も赤にすればいい。
さて、小池三枝の「漱石作品における服飾」は、上にある3つの「赤シャツ」像は全て間違っていると一刀両断しているのだそうだ。

では赤シャツはどんな格好をしていたのか?

ヒントは皆さんの目の前に提示されている。

答えをご存知の方はそのまま笑って通り過ぎてくださって結構。分からない方は上にある原文をもう一度よく読んでから下の答えをご覧ください。



谷沢先生は論文をこう噛み砕いて説明している。
解答は、漱石がチャンと書いているのに、明治のハイカラすなわち洋服、という固定観念のため、ついだれもが記憶にとどめなかったのだ。赤は衛生のため、と聞かされたその時、すぐさま坊ちゃんは「入らざる心配だ。そんならついでに、着物赤にすればいい(原文ママ)」と内心で嘲笑する。赤シャツ教頭は、和服の下に赤シャツを着込んでいたのである。(同上)
「何という間抜けだ!これで僕は自分の頭の上に乗っけたメガネを探して部屋中ひっくり返すような男を生涯バカにできないだろうな。」(島田荘司『占星術殺人事件』 講談社ノベルズ P.237)という御手洗潔のセリフが即座に思い浮かんだ。つまり、「赤シャツ」教頭は、赤シャツを金太郎の腹掛けよろしく身に付けていたことになる。

さらに谷沢先生はこう畳み掛ける
 明治中期、「四国辺のある中学校」の教頭をつとめ、「猫の額程な町」で、それ相応の地位を保っている男が、「虞美人草」の小野や、「野分」の中野のような、白シャツ白カラーの洋服姿、寸分の隙もない本格のハイカラであってはかえって不自然である。
 漱石が描こうとした赤シャツという人物は、東京の本当のハイカラ紳士とは大いに違う存在だった。土地の人も、本人自身も、都会的な好尚を身につけた、ひとかどのハイカラだと信じている。しかし、東京から赴任した坊ちゃんの目から見れば、一目でお里の知れる、田舎じみた、泥くさい、至ってチグハグな格好だ。つまり「ハイカラ」ではない「ハイカラ野郎」である。そのような「赤シャツ」の存在を象徴するのが、洋服ではない着物の、その襟元から見える赤シャツだったと考えられる。(谷沢「同上」P.74)
ぐうの音も出ないとはこのことで、危うく電車を乗り過ごしてしまうところだった。確かに「着物も袴も赤にすればいい」という言葉は相手が着物と袴と赤シャツを同時に着ている時に言うべきセリフである。それを私を含めて数多の漱石読者は誤読してきたわけだ。道後の人も、アニメ製作者も、今に至るまで。
[PR]
by haruhico | 2005-01-01 11:43 | ちょっといい話 | Trackback(3) | Comments(10)
トラックバックURL : http://haluhico.exblog.jp/tb/1499055
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Tracked from 海驢blog at 2005-01-01 23:11
タイトル : 今日のトリビア
小説は事実よりも奇なり?(^_^; 漱石の「坊ちゃん」を"読んだ"ことがありますか? 社怪人日記2005さんの記事を読んで目からうろこが落ちました。 エウレカ!... more
Tracked from 社怪人日記2005 at 2005-01-16 16:57
タイトル : 漱石の「坊ちゃん」を"読んだ"ことがありますか?Part.2
親譲りのケチん坊で子供の頃から損ばかりしている。 正月の記事を書く際の下調べで、とある推理小説を発見してからそいつが頭から離れない。Amazonで調べると出版元は朝日新聞社だという。なに、1575円くらい財布の中に何時でもあるが、朝日新聞に金を恵んでやるくらいならブックオフで買った方がよっぽどいい。105円コーナーにあれば万々歳だ。 正月からブックオフに行ってハタと気づいたのだが、作者の名前を憶えてくるのを忘れた。仕方がないので「このミス」のバックナンバーを片っ端から立ち読み(笑)した。面...... more
Tracked from 社怪人日記2011 at 2011-03-09 23:30
タイトル : 昭和は遠くなりにけり
仕事中にMy Yahoo!のトピックスを見て久しぶりに飛び上がるほど驚いた。 関西大学名誉教授の谷沢永一さんが死去 産経新聞「正論」の執筆者で保守派の論客 http://sankei.jp.msn.com/life/news/110309/art11030911460004-n1.htm産経新聞「正論」の執筆者で保守派の論客として知られる関西大学名誉教授の谷沢永一(たにざわ・えいいち)さんが8日、心不全のため兵庫県伊丹市の病院で亡くなった。81歳だった。葬儀・告別式は近親者で行う。  昭和4...... more
Commented by minami18th at 2005-01-01 15:34
うーむ、そうでしたか。私も何度も「坊ちゃん」を読みましたが、考えもつきませんでした。
気づかぬ誤読は他にももっとあるかもしれませんね。
Commented at 2005-01-01 21:24
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by haruhico at 2005-01-01 21:42
>minami18thさん
新年早々驚いていただけたでしょうか?
大晦日にするか悩んだのですが。
>鍵さま
しまったぁ!そういう使い方があったか!
慌てて今、Webから投稿してきました。まさか鍵さま既に投稿してませんよね(激爆)。
Commented at 2005-01-01 22:27
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by haruhico at 2005-01-01 23:51
>鍵さま
OK牧場!
Commented by xiaoxia at 2005-01-04 13:02
「シャツ」と言われて、らくだのシャツの赤いのを想像していました。何となく、オヤジのネルシャツって、丸首なんだろうなぁ、と思っていまして。
まんざら遠くもなかったのですね。ネルの襟付きシャツって、山登り装備って感じがします(笑)
あ、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
Commented by bithoney at 2005-01-04 19:51
それ、しらんかってんチントンシャン(C)SET
いやはやお恥ずかしい。

いつだっけかしら。
劇団青年座の赤シャツが主役のお芝居、その名も「赤シャツ」で
(マキノノゾミ作で宮田慶子演出)着物の中にまで赤シャツを
着こんでいたシーンがあるって友人から聞いた時、
「そういうやり過ぎも面白いねー」と話したのが今となっては
恥ずかしい限り。

言われてみれば、文中に「年がら年中赤シャツを着ている」
とある上に、着物を着ているシーン(パチモンの時計を
見せびらかすとこ)もあるものねえ。なるほど、その時も
赤シャツを中に着てたのか。

(アナタのところは、こういう知的な知覚刺激があって好き。)
Commented by haruhico at 2005-01-04 21:46
>xiaoxiaさん
明けましておめでとうございます。
私はどこかで刷り込まれたのか、カッターシャツだとばかり思っていました。でも xiaoxiaさんも洋服だと思ってたワケですよね。

>bithoneyさん
>青年座の「赤シャツ」
これを書く前にググったら、いきなりこれのチラシ(モノクロなので赤かどうかは分かりませんでしたが)で赤シャツが着物を着ていたので、やべぇ、もしかしてカン違いしてたのは俺だけ?とビビりました。作者の読解力に脱帽というべきでしょう。

>見れば赤シャツだ。何だかべらべら然たる着物へ縮緬の帯をだらし
>なく巻き付けて、例の通り金鎖りをぶらつかしている。あの金鎖りは
>贋物である。赤シャツは誰も知るまいと思って、見せびらかしている
>が、おれはちゃんと知ってる。

なるほど、こういうシーンもありましたね。すっかり忘れていました。谷沢先生も「『坊っちゃん』のどこを見ても赤シャツ教頭が洋服を着ていたことを示す文章はない」と断言されています。

>知的な知覚刺激
なんか歯が痛くなりそうな刺激ですね(笑)。
Commented by rasu at 2005-01-12 00:28 x
着物も袴も・・・確かに着物の上に着ていたと言う考え方も出来ると思いますが、当時の服装として和服と洋服はどちらが多かったのか・・・もし、半々ぐらいならば、(洋服の)シャツの他に(和服の)着物も袴も・・・。
と言う意味で言った可能性もあるような気がするのですが。
いや、おそらく上記の解説で正しいのでしょうが、否定しきれない部分もあるのではないかと思ったので。
Commented by haruhico at 2005-01-12 23:53
>rasuさん
はじめまして、愛・蔵太さんのところから来られたのでしょうか?
>着物の上に着ていた
着物の上にシャツを着ますか!着物の袖はどうするのでしょう?シャツの袖の方が"細い"ですよね、普通。
「坊っちゃん」の時代は日露戦争(1905)後のようですが、山本夏彦氏によれば男の着物が滅びたのは関東大震災(1923)後だそうです(「誰か『戦前』を知らないか」文春新書・P185)。
<< 書初めのお題は決まりましたか? 書きたいことはあるけれど >>